不動産調査・売買契約

Written by ino on . Posted in contract, survey

不動産を購入するための売買契約。一般の方でも商品の購入やサービスを受ける際に申込書や注文書、ネット上の同意の類は日常的に経験します。しかし不動産の売買契約書は申込書や注文書ではありません。売主様と買主様の権利と義務を明確にするためのものです。

不動産売買契約では、まず売買する対象不動産を特定します。土地や建物の面積や、土地の表記の中に、道路(私道)が含まているか確認します。契約前の重要事項説明でも「道路」については説明を受けます。道路の種類とその道路へ売買対象の土地が、何メートル接しているか、接道はとても重要な事項です。そして売買対象となる土地に私道が存在する場合は、売買契約書の土地の欄に複数の土地が表記されます。また、道路(私道)でない本地においても、いくつかに土地が分筆されてている場合も土地の欄に複数の土地が表記されます。複数の土地が表記されている場合は、その土地に対する権利(所有権)の割合を確認しましょう。道路が私道の場合は、隣接地の土地所有者と「共有」状態になっている場合がほとんどです。つまり、私道全部に対する権利(所有権)は取得できません。持ち分割合で権利(所有権)は取得することになります。ここで注意したいのは、私道が存在するにも関わらず、持ち分割合で権利(所有権)を取得できない場合です。権利(所有権)が持ち分としてでも取得できないと、私道を使用することができなくなる可能性があります。
中古の一戸建ての場合、建物については、増築されていると登記簿にその面積が反映されていない場合もあります。建物の面積については登記簿の面積とともに、増築部分などが存在すれば、その面積も売買契約書に記載されるべき事項です。
売買代金と手付金及び支払いの時期。売買代金については契約前に合意している事がほとんどですから問題ないでしょう。個人間売買の場合は、消費税は必要ありません。そして売買契約の際には「手付金」という金員を支払います。

手付金とは

手付金には(1)証約手付(2)解約手付(3)違約手付の3種類があります。

手付金の違い
(1)証約手付 契約の締結を証することを目的として授受される手付けをいいます。
(2)解約手付 * 買い主は既に支払った手付金を放棄する(返還を求めない)こと * 売り主は既に受けとった手付金の倍額を買い主に返すこと により、売買契約を解除することができる手付けをいいます。
(3)違約手付 当事者に契約違反(違約)があった場合に、損害賠償とは別に違約の「罰」として没収することができる手付けをいいます。

手付解除について

解約手金による契約の解除を一般的に「手付解除」といいます。例えば、契約締結後に事情が大きく変わった場合には、手付金を放棄する、または倍返しすることにより契約を解除することが可能です。 ただし、解約手付による契約の解除ができるのは、「相手方が履行に着手するまで」とされています。 つまり、既に相手方が契約に定められた約束事を実行している場合には、手付解除はできません。
ただし、手付解除に当たっては、「相手方が履行に着手しているかどうか」をめぐってトラブルになることも多いようです。また、手付解除が可能な期間は、売り主と買い主双方が解除権をもっているので、契約が実行されるかどうかが不安定な状態となります。したがって、手付解除ができる期間を「契約日から●日以内や何年何月何日まで」と限定する場合が多いです。そして支払った手付金は残代金の支払い時に売買代金の一部となります。3000万円の売買代金で契約時に手付金を100万円支払った場合は、売買代金の残金決済時に2900万円支払います。

違約金とは

契約違反(つまり約束違反、これを法的には「債務不履行」といいます)により契約を解除するときの取り決めです。売主様又は買主様が売買契約に定める債務を履行しないとき、その相手方は、自己の債務の履行を提供し、かつ、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除することができる。例えば、極端な例を挙げれば、売買代金全額を支払ったのに売主様が対象不動産を引き渡さない、所有権の移転登記に応じない。買主様が売買代金の支払いに応じない(住宅ローン特約の場合除く)。このような場合には売買契約を解除することができます。そして損害賠償金としての「違約金の額」を予め決めておくというものです。また、「違約金は、損害賠償額の予定と推定する」(民法第420条第3項)という事に注意が必要です。つまり、売買契約における違約金の定めは、損害賠償額の予定と推定され、契約違反をされた相手方は、特段の事情がない限り、「実際の損害額のいかんにかかわらず」、約定の違約金を請求することができる(同条第1項。大判大正11年7月26日民集1巻431頁)。違約金の請求が解除を前提にしている場合は、売買契約を解除しなければ約定の違約金は請求できないということになります。

住宅ローン特約とは

買主様が住宅ローンを利用して不動産を購入する場合、その住宅ローンが借りられなければ、売買契約は白紙となり、買主様が契約時に支払った手付金が返金されるという特約です。この場合は契約解除しても違約金は発生しません。当たり前と言えば当たり前の契約条文です。但し、ここで問題なのは、住宅ローンには事前審査という物が存在するのと、売買契約後、買主様は住宅ローンの承認に向けて、遅滞なく積極時に申込手続きをしなければならないという事です。そして、融資未承認の場合の契約解除期限を設けることが一般的です。いつまでも延々と住宅ローンの審査を売主様は待たないということです。遅滞なく積極時に申込手続きをしている証として、金融機関等に提出した、その提出書類の写しを売主様に提出します。買主様が、必要な手続きをせず提出期限が経過し、売主様が必要な催告をしたのちに融資未承認の場合の契約解除期限が過ぎた場合、あるいは故意に虚偽の証明書等を提出した結果、融資の全部又は一部について承認を得られなかった場合には、白紙解約が認められず、手付金が返金されないという可能性もあります。

瑕疵担保責任とは

まず「瑕疵」とは、欠陥、或は、売買対象不動産の品質や性能を欠いている事です。不動産売買契約における「瑕疵」とは「隠れた瑕疵」のことを言います。「隠れた瑕疵」とは、誰も気づかなかった瑕疵です。売買契約まで至る過程で、例えば、建物の不具合を買主様に知らせた場合は「隠れた瑕疵」にはなりません。その時点で、買主様は修繕費用を見積もり、その分売買代金の値引き交渉を行うでしょうし、購入そのものを断念する、という判断ができるのです。
また、「瑕疵」で問題となるのは、物理的瑕疵、法律的瑕疵、心理的瑕疵、環境瑕疵などがあります。物理的瑕疵とは、例えば、建物の雨漏れ・蟻害(シロアリ)・耐震強度不足等、土地の土壌汚染、地中障害物など、取引の対象不動産に物理的な不具合が存在する場合です。法律的瑕疵とは、例えば、建物の再建築が出来ない。建物の用途が制限される。など、法令等により自由な使用収益が阻害されているような場合です。心理的瑕疵とは、例えば、対象不動産で過去に自殺や殺人事件などがあった場合などです。 環境瑕疵とは、例えば、近隣からの騒音・振動・異臭・日照障害や、近くに反社会的な事務所があって安全で快適な生活が害されるおそれがある場合など、対象不動産自体には問題はないが、対象不動産を取り巻く環境に問題がある場合です。

買主様は、購入後いつまで瑕疵担保責任の請求ができるかという点については、買主様が瑕疵を知った時から1年というのが、民法上の原則(民法566条3項、同570条)のようですが、実際の、個人間の不動産取引では、2か月から3か月程度です。また、建物自体が老朽化していて、売り出し価格・売買代金に建物の価値を反映させていない、いわゆる「土地値」の場合は「売主様は当該不動産の瑕疵担保責任は負わない」という特約条項が、売買契約書に入ることがあります。また、個人所有の不動産で、その個人が破産状態の場合、例えば、会社の給料が減り、住宅ローンが支払えなくなった。そして金融機関から競売の申し立てをされた。などの場合は、現実問題売主様は金銭的賠償が不可能です。この場合も「売主様は当該不動産の瑕疵担保責任は負わない」ということになります。

瑕疵担保責任について、売主様が不動産業者や新築分譲の建設会社であった場合は、個人間売買とは違います。

まず、「住宅品質確保法」です。同法では瑕疵担保責任を負う期間は、原則として、物件の引渡しから10年間です。但し、土地や中古物件には適用されません。新築住宅であれば、一戸建てだけではなくマンションも適用されます。対象となる瑕疵の内容は、新築住宅の物理的瑕疵のうち、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に限定されています(同法94条1項)。構造耐力上主要な部分とは、基礎、壁、柱等の重要部分です。雨水の浸入を防止する部分とは、屋根、外壁等のことです。

次は、「瑕疵担保履行法」です。住宅品質確保法は10年にわたり瑕疵担保責任を追及できるのですが、その間に売主様である会社が倒産したらどうするか、倒産していなくても、複数の大規模マンションに欠陥が見つかった場合、賠償できるだけの資力があるのかと言ったことが問題となります。このような問題に対応するために法律が「瑕疵担保履行法」です。同法は「新築住宅」に限られます。瑕疵担保責任履行のための財源については、供託制度と保険制度があります。このどちらかを不動産会社等に義務として課し、万が一の場合の資力を確保するというものです。

特約条項について

売買契約において、一番理解したいのは、「特約条項」です。上記でご説明した内容は、宅建協会指定の売買契約書に初めから印刷されている(ひな形となっている)ことなですが、「特約条項」は空白です。実際の不動産取引では、その不動産取引毎に多くの特約条項が付け加えられています。それは、売買の対象不動産特有の約束事で、その特約が条件で売買契約される場合が多いので、ケースバイケースで対応し判断する必要があります。

Tags: ,